ノブレストリガーオブリージュ - 4/14

 倒れ伏す適格者たちの中で、立っていたのは迅悠一ただひとりだけだった。
 少し離れた建物の壁に凭れ、その光景を静かに見つめている人影がある。クリアになった視界の向こう、その瞳と不意に目が合って、迅は立ち尽くした。

 暗がりに紗がかかったような、不思議な瞳だった。どれほど研ぎ澄まされた遣り取りの最中でも、いつもその瞳だけはどこか穏やかで、凪いでいて――それでいて、奇妙に爛々と光っていた。
 戦う時の、その目を見るのが、迅は好きだった。
 
 晴れて手に入れた黒トリガー。変化する己の立ち位置。それによって途絶する、ただただ楽しかった日々。過去と未来の狭間にあって、そのひとときだけが今、迅の目の前に浮かんで消えない。

 目の前のその人へ、謝るのも違う気がした。しかし、どうだ手に入れたぞと居直って、過去を振り切る気にもならなかった。
 それを手にする以外の選択肢が有り得なかったのも本当だし、その選択によって失われるものが惜しくてたまらない事も、また本当だった。
 だから迅は、何も言わずに、その瞳に笑いかけた。ひどく曖昧な、少し困ったような、そんな笑みで。