8
放課後、ビーデルは悟飯と繁華街で食べ歩きをしたり、ゲームセンターに行ったり、その辺を歩いたり、そういう普通のデートをした。それだけでよく分からないぐらい楽しくて、嬉しくて、幸せだった。二人なら空を飛ぶことも、気功破だって出すことも出来るけれど、まるでそんな事実は無いみたいに何の変哲もない学生の遊びをする。そこにはどこか、二人だけで共有する秘密めいた匂いがした。
並んで公園の広場を歩いていた時、目の前でひったくりが発生した。ベビーカーを押している母親の鞄を、男が強引に奪い取り走り出す所を見た。
母親の悲鳴と共に、弾き飛ばされたベビーカーが倒れかけるのを、目にも止まらぬ速さで移動した悟飯が支える。
走ってくる男の前にビーデルは立ち塞がり、蹴りを入れて進行を阻んだ。
蹴られた腹を押さえて数歩下がって唸り、逆上して再び動こうとした男の腕を、後ろから悟飯が掴む。
すると出し抜けに悟飯が呟いた。
「……あ。やばい」
そして一瞬光った後、悟飯の気が一気に爆発し、周囲に熱風のような圧力を拡散すると共に再びあの形態へと変化していた。
腕を掴まれたまま間近でその気を浴びた男は完全に硬直している。
その男の耳元で、厳しい顔つきに変わった悟飯が、ぼそりと冷たく呟いた。
「……お前のせいで台無しになった……」
呟かれた男は、恐怖のためかその場で失神した。
何度もお礼を言う女性と別れ、再びビーデルと歩き出した悟飯は、しょんぼりと肩を落として言った。
「だいぶコントロールは出来てきたんだけど、実はまだ、不意に戻っちゃう時があって……」
懺悔するように言うその姿は、今はまた強くなさそうな方の形態になっている。
あの後すぐ、ごめんねちょっと待っててと断り何やら集中した様子を見せたかと思うと、集まった光が収束するようにへにゃっとした雰囲気になった。
本当にヘンな人だ。思い出すとおかしくて、ビーデルはこっそり笑う。
そして空いていた悟飯の手をとって、思い切って言った。
「ゆっくり慣れていけばいいじゃない。わたし――どっちの悟飯くんも好きよ」
言うには少し勇気が要った。でも驚いたように目を丸くした後、ぽっと頬を赤くした悟飯の顔がとても可愛かったので、ビーデルは自分の勇気を内心で褒め称えた。
