もろい世界の堅牢な繭で - 7/9

 数日休んでから登校してきた孫悟飯は、どういうわけか元のポヤポヤした雰囲気に戻っていて、あの妙なオーラも発さなくなっていた。
 その事実を目の当たりにした在校生男子は、驚きや追究もそこそこに大喜びした。これで学校生活に平穏が戻るのだ。
 しかし期待に反して、魔法が解けて我に返るかに見えた女子たちは「でもこっちもカワイイ~」と全く幻滅した様子もなく引き続き悟飯を取り巻いていた。
 脱力した男子の間で負け試合の雰囲気が漂う中、教室にビーデルが入ってくる。
 それに気づいた悟飯は、周囲の女子に「ちょっとごめんね」と断って離れると、はにかんだ笑顔でビーデルの前に立った。
「ビーデルさん」
 顔を赤くしたビーデルが、嬉しそうに悟飯を見上げる。
「悟飯くん……ちゃんと戻れたのね」
「うん。それでその……」
 悟飯も顔を赤くして少し視線を泳がせた後、ビーデルに向けて、掌を上に向けて差し出した。
「放課後、ボクとデートしてくれますか?」
 直球の言葉だった。あらかじめ言うと決めていたように、その口調には迷いがない。
 ビーデルは今まで誰も見た事のない、年相応の女の子の顔をして――やはり迷わず、その手をとった。
「……うん!」
 重ねられた手に悟飯は微笑み、大切そうにゆっくりと握る。

 数秒ポカンとした間があった後、悟飯を取り巻いていた女子から一斉に黄色い悲鳴が上がった。
 それは決してショックを受けたような悲痛なものではなく、「キャーおめでとー」「ビーデルならゆるす~」「お似合いすぎ~」と、悟飯に色めき立っていたのと同じトーンでキャーキャー盛り上がっている。
 愚痴っていた男子たちは呆然とした。
「……女子ってわかんねえ~」
「アレだよ……恋愛ドラマにきゃーきゃー言うみたいな」
「どっちにしろ少女マンガみたいなノリだったんじゃねえ? 悟飯にきゃーきゃー言ってたのも」
「オレ、ちょっとわかるな……」
「オレも……」
「マジかよ」
「それよりさあ、もうこないだまでの悟飯に戻らねえのかな……オレあっちの方がスキだな……」
「オレも……」
「……。」
 どこかうっとりとした、遠いものを見るような目で頬杖をついている連中を眺めて、シャプナーはアイツ多分なかなか男の友達できねえだろうな、と思った。
 そして、仕方ねえ自分がなってやらねえとなと、勝手に張り切って決意した。