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「今日は大丈夫だっただか? 学校のもの壊したりしてないべな?」
「大丈夫ですよ。ほら、追加のペンも貰ってきました」
そう言って悟飯が笑顔で掲げるペンは、この形態になってから力のコントロールが出来なくなり、気を抜くとすぐ手に持ったペンを折ってしまうようになった悟飯のためにC.Cで拵えてくれた特別性だ。それでも絶対に折れないわけではないらしいが、遥かに長持ちしてくれるようになったのは確かなので、チチは用意してくれたブルマに大いに感謝した。このままではペンを箱で発注しなければならないかと思っていた所だったのだ。
「えらい神様にパワーアップしてもらっただか何だか知らねえが、一時はどうなることかと思ったけんど……何とかやれてるみてえだな」
いくらか安堵してため息をつくチチに、悟飯は「心配させてしまってすみません」と苦笑する。
その顔を惚れ惚れと見上げて、チチは悩ましげに頬に手をやった。
「それにしても息子が男前なのは嬉しいけんど、男前すぎるのも心配だな~。そんなに精悍な顔つきになっちまって、女子が放っとかないべ」
「べ、別に普通だと思いますけど……」
「あのビーデルって娘とはうまくいってるだか?」
「うまくも何も、付き合ってるとかじゃないですよ」
恥ずかしそうに否定して目を逸らす顔には既にどこか色気すら漂っている。チチは口を酸っぱくして言った。
「何でもいいがよ、その辺の軽い女に引っかかっちまったらダメだぞ! 積極的な女ほど注意だ! 油断したらすーぐエッチなことされちまうだよ!」
「だ、大丈夫だと思いますけど……」
気圧される悟飯の横からにゅっと腕が伸びて、その肩をがっちりと抱いた。
「まあまあ、あんまり心配すんなよチチ。悟飯ならうまくやるさ」
「深く考えてもないことを気軽に言うでねえ悟空さ。せめて本音を言ってけれ」
「強いからいいじゃん」
「悟空さはすぐそれだよ!」でれでれしている悟空に指を突き付けてチチは憤慨した。
生き返ってからというもの、悟空はずっとこの調子だ。チチですら何となくわかるほどだが、悟飯はどうやら悟空すらも大きく超えて地球で一番強い男になってしまったらしく、それが悟空にとっては嬉しくてならないらしい。悟飯がそばにいると常に上機嫌でにこにこしている。息子の学校生活を心配する以前の問題だ。
「へえ~、これが悟飯でも折れねえっていうペンか」
「普通に使えば、ですよ。試しに折ろうとしたりしないでくださいね、貴重なんですから」
「わかってるって」
肩を抱いたままソファーに座っていちゃいちゃする二人に、悟空の反対側から悟飯の腕に飛びついた悟天が頬を膨らませながら言った。
「おとうさん、にいちゃんにさわりすぎ~! おとなでしょ! あんまりくっつかないでよ!」
「ん~? いやあ何せすげえ気だからよお、つい引き寄せられるっつーか」全く離れる気配なく悟空がからからと笑う。「こうやってくっついてるとなんつーかこう、健康になる気すらするもんな。これが変身して捻り出したんじゃなくて純粋な天然の気だってんだもんな~」
惚れ惚れと言いながら悟飯を見つめる悟空に、チチは負けじと悟飯に文句を言った。
「ずりいべ悟飯ちゃん、オラがくっついたら嫌がるのに」
じりじり迫ると悟飯は恥ずかしそうにやんわりと拒否した。
「勘弁してくださいよ、もうそろそろ十七なんですから」
「悟空さは良いだか!?」
「おとうさんはずっと会えなかったから……」
別枠ですよ、とはにかむ悟飯の頭を「な~」と撫でると、悟空はその顔をじっと男前に見つめて言った。
「あの世も楽しかったけどよ、やっぱおめえをそばで見れねえ天国より下界の方がずっといい」
「おとうさん……」
言われた言葉に目を見開く悟飯の白い頬がぱっと赤くなる。
「悟空さ、そいつはおらに言うべきセリフじゃねえだか?」
見つめ合う二人にチチが冷静にツッコミを入れる一方、悟天も実力行使で悟飯の首元にかじり付く。
「にいちゃん抱っこ~!」
「はいはい」
苦笑して優しく受け止める悟飯を見下ろし、チチは改めてため息をついた。
「心配だぁ~。こんなんでモテないわけがねえだよ。女の子から連絡先とか渡されてないべな」
「え、いっぱい渡されましたけど……でも学校ってそういうものなんじゃないんですか?」
「な~!? そうなんだべかっ!? じゃ、じゃあ男の友だちからも連絡先渡されたんだな?」
「いえ、それは別に……」
「やっぱり普通じゃねえっ、そらアプローチだよ!! 危ねえだ~、都会は怖いとこだ~! うっかりすると悟飯ちゃんが身を持ち崩しちまうだ~!!」
