インターホンが鳴って、出てみると宅配業者だった。
玄関口で伝票にサインして、受け取った荷物を持って室内に戻る。
「オヤジ宛か……」
呟いて顔を顰めた。
怠い足取りでオヤジの部屋に向かい、中に入って無駄に大きなデスクの上へ包みを放る。
ピカピカの天板に手をついて、目を細めて差出人の名を読んだ。知らない名前だ。
オヤジに受け取らせたかったら病院に送らないとダメなのに。こいつモグリだな。
同じ机の隅に積み上がっている三日前と、五日前と、八日前に届いた包みを横目に見てため息をつく。
寒々しい部屋だ。モノは色々ある。書棚にもぎっしりと本が。でも、あまり使われてないんだなというのが一目で分かる。生気が感じられないのだ。人が突然いなくなって長い時間が経った廃墟というものがあるとしたら、こんな感じに近いのかもしれない。
ふと目について、きちんとデスクに収納されていたハイバックの椅子を手前に引いた。
立派な椅子だ。本革張りの、めちゃめちゃ高そうなやつだ。たぶん社長か院長しか座れないだろう。そこに、腹いせ混じりにどすんと勢いよく座った。しかし高級な椅子は全く軋みもせず、易々とオレの尻への反動を殺してくれた。これはすごい。腰が痛い人にもいいだろうな。
そのままピカピカの椅子の上で片膝を抱えて、頬を預けた。
ひどく静かだ。誰も居ないから当たり前だけど。この無駄に広い部屋も相まって、余計がらんとして感じる。
そりゃあ金はある。あるんだから、広い部屋も立派な机も高級な椅子も持つことは出来るだろう。
でも、こんなにピカピカなのに使われないこの部屋は可哀想だ。せっかくあるのに、使われなくちゃ意味がない。
そんなことを考えた。考えた後に、すぐ否定したくなった。でも、やっぱりそうだよなと思い直した。
艶やかな机の上を指先でゆっくりなぞる。
滑らせた後に指先を見下ろした。そこにはやっぱり少しだけ、埃がついていた。
