タトゥイーンでの戦いの最中にグローグーが帰ってきた。俺の所に。
ペリ・モットーとドロイドの操る車の上で出会った時は、夢みたいな心地だった。気持ちが浮足立って、もうずっと味わったことのない感覚がした。まさか本当に? でも確かに間違いない。グローグーだ。俺とずっと旅をした、あのグローグーだ。オッサスで遠目に見た小さな影。道が分かたれたことを悟り、何もかももう届かないのだと感じたあの瞬間。その信じられないくらい小さな手が、今の俺に向かって伸ばされる。別れの日に俺の頬に触れた手が。そして嬉しそうに細められた大きな透き通った目が俺を見つめた。あの頃のように。
ああ、本当に? とてもまだ信じ切れていない俺の目に、俺が願を懸けるように携え、アソーカに託したシャツの存在が飛び込んできた。本当なのだと思った。確かにこの子はこれを受け取り、俺の所に戻って来たのだ。
戦いは苛烈だったが、どうにか命を繋ぐことができた。長く会わなかったグローグーにも成長の跡が見て取れた。ボバ・フェットに別れを告げ、二人でスターファイターに乗り込み宇宙へ発つまでは色々とあった。二人きりになった時、ようやくひと段落ついたという気がした。とても、とても久しぶりに。
狭い船内、長い移動の間はコックピットがそのままベッドになる。後部の覗き窓は誂えたようにグローグーにぴったりで、頭上一杯に広がる星空が楽しいのかいたく気に入りの場所になったようだが、眠る時には俺の懐に潜り込んできた。
長い旅をしたからか、それとも何度も亜光速をせがみはしゃいで疲れたのか。力尽きたように俺にくっついて寝る姿に、ふと雪深い洞窟の中でレイザークレストが座礁した時のことを思い出した。
頼まれた乗客を送り届ける目処が立たないどころか、機体の状態的にも再び飛び立てるのかすら怪しい状況だった。明日どうなるのか、ここから生きて出られるのか、何も分からなかった。ただ身体と精神の疲弊だけが真実だった。後に阻まれたが、その晩はとりあえず寝て休むしかないと判断した。穴だらけの機体、冷えた風が吹き込む極寒の船内で、やけくそのように無事な床に座り込み、壁にもたれて休むと、暖を取りに来たらしくグローグーが懐に潜り込んできた。俺のマントを毛布代わりにして、もぞもぞと楽な体勢を探し収まるグローグーを俺は放っておいた。目を離すとすぐに何かやらかすから丁度いいとすら思った。
あの頃のグローグーは、本当に手のかかる子供でしかなかった。思えば旅を続けるごとにグローグーもかなり成長したのかもしれない。それでも、会えなかった間、あの遭難した日の夜すらもが、懐かしくて恋しくてたまらなかった。
スターファイターの低い駆動音だけが響く宇宙の海の中、膝の上で眠るグローグーのぷうぷうという寝息がよく聞こえる。その丸い頭と、俺の胸当てで折れ曲がる柔らかい耳を見ていて、ふと涙が零れた。
もう何もいらない。
ただただそう思った。
俺にはこの子だけがいればいい。
教義を破り、帰属先を失い、漂う宇宙は果てしなく、移動のためだけに特化した流線形のスターファイターの中には碌なスペースもない。
それでも腕の中のグローグーを抱きしめて、拭うことも出来ず流れる涙をそのままにして、ただ息をする俺という存在は、今、この世の誰よりも何よりも幸福だった。
