「ねーパパ、きょうもねー、ピッコロさんにのみこみがはやいってほめられた!」
「そっかーすごいなあ。ピッコロさんが褒めてくれるなんて中々無いんだぞ」
「えー? そんなことないよ。いっつもほめてくれるよ。トレーニングのおわりに、きょうのよかったところとかいってくれるよ」
「ええー? そうなの? パパの時はそういうの無かったなあ~」
教育方針を変えたのか……あるいは丸くなったのか……と悟飯が師の変化に思いを馳せていると、パンがその膝にじゃれ付きながらにこにこ顔で付け足した。
「あとねー、パパよりおぼえるのがはやいって!」
「あら~」
パンを抱き上げながら悟飯は苦笑した。もしかして自分はあんまり褒められた記憶が無いのは、あんまり褒める所が無かっただけだろうか?
「どうしようかな、パパよりパンの方が強くなったら」
「そしたら、パパのことまもってあげるからだいじょうぶだよ」
「頼もしいなあパンは」
「えへへ~」
うりうりとパンの頭を撫でながら、悟飯は少ない師の褒め言葉を思い出した。
『……悟飯が……よくやった』
記憶の中の師は、こちらに背を向けていた。
――人造人間との闘いに向けて修行している合間、初めて見た師のその技に憧れた。針のように細く気を一点に集中して撃つ技。理に適った、保証された威力。気の操作の仕方、師から学んだ技の系譜を色濃く感じる、まさしく必殺の。
こっそりと練習して、初めて自分の納得いく形になって人知れず喜んだのは、果たしていつ頃の事だっただろうか。
「……上出来だった」
わざわざ背を向けてから改まって言われた言葉に、悟飯は目を丸くした。
ああ、あの背中だ、と思う。
思いも寄らない、こちらが期待していないような意外なタイミングで、ぼそりと告げられる真っ直ぐな賛辞。
悟飯は微笑む。
少なくても、短くても、詳しくなくても。
やっぱり自分には、この背中越しの褒め言葉がいちばん嬉しい。
「あたらしいトレーニングたのしみだな~!」
ブルマの運転する帰りの飛行機の中、悟飯の腕にぶら下がりながらパンがはしゃいで言う。支えてやりながら、悟飯は少し思案して言った。
「ボクも今度からピッコロさんにトレーニングしてもらおうかな」
「ほんとぉ!? パパもいっしょ!?」
パンが目を輝かせる一方、ピッコロは驚いたような、しかし満更でも無さそうな顔で悟飯を見る。
「どういう風の吹き回しだ」
悟飯は笑って言った。
「ボクもパンと一緒にトレーニングして、ピッコロさんに毎日褒めてもらおうかなって」
聞いたピッコロは珍しくぶはっと変な風に吹き出した。
「ア……アホか!」
これまた珍しい雑なツッコミに、悟飯はあははと声を上げて笑った。
「お前そんだけ一緒にいて、まだ褒められたいのかよ」
クリリンが呆れたように笑って言う。
悟飯は笑顔で答えた。
「いやあ、やっぱりピッコロさんにはいつ褒められても嬉しいですね」
「お前は昔っから変わんないなあ」
しみじみ言うクリリンの横で、ピッコロはもう一度「アホが」とぼそりと吐き捨てた。心なしかその耳に血の色が上っている。
パンがぼそぼそと悟飯に耳打ちしてきた。「ピッコロさん、どうしててれてるの」
悟飯は笑った。どうしてだろうね、と囁き返す。
ピッコロはとうとうこちらに背を向けてしまった。
悟飯のよく知る背中だった。
