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辛うじて落下の衝撃を殺す程度の飛翔呪文を使い、落ちるように上空から降りてきたポップをアバンが受け止めた。
目を焼く閃光が空から去り、水をうったように静まり返る空気の中で、荒い呼吸の下ポップが言った。
「黒の……核晶を、抑え込んだバランも、身体は残ってた。あの時のバランより強力な竜闘気を持つダイが、跡形もなく消し飛ぶなんてことは、ありえない」
独り言のようなその声には、執念があった。静まり返る空気の中、呪文のような言葉が響く。
「どこかにいるはず……」
そうして真っ直ぐ立つ力も残らぬ身体を引きずり、一人で彷徨い出ようとするポップの肩をアバンが引き留める。優しく、しかし有無を言わさぬ手つきに、ポップは呻くように言った。
「先生……シルバーフェザーもう無いんですか」
「無いですし、あげませんよ」無意識にか心臓を抑えているポップの手を、アバンは悲し気に見つめた。「心臓が痛むんですね。マトリフのように」
呟くと、後ろからポップの身を引き寄せ、その目を掌で塞ぐ。
「ポップ。貴方はもう休んでください。動ける者がダイ君の捜索に当たります」
「嫌です。おれは……」
「貴方の身体はとっくに限界です」
「そんなこと」
「体を労わってください。……ダイ君のために」
ポップの言葉が途切れる。
アバンはその耳に、後ろから囁くように催眠呪文をかけた。糸が切れるように、がくりとポップの力が抜ける。
涙の痕の残る寝顔を、アバンは静かに見下ろした。そこにはただ、悲しみと労りが滲んでいた。
「先生……大丈夫なんですか? ポップは……」
遠慮がちにマァムが尋ねる。アバンは微笑みを返した。
「休んだら大丈夫ですよ。……無茶をした魔法使いのダメージは、怪我と違って回復出来る類のものではありません。休ませてあげるしかないんです」
マァムの表情が曇る。アバンは沈んだ場を元気づけるように、声を張って周囲へ言った。
「さあ、強情っぱりなポップくんの分まで引き続きダイ君の捜索に参加してくれる、体力自慢の方はいませんか?」
挙手を煽る大勇者に、我も我もと続々と兵士たちの手が挙げられた。
