鬼滅も近畿地方も8番出口もMERもヒックとドラゴンも観たいんですが、そろそろどれか観たいな…と思って開いた金曜夜の上映スケジュールの中、一週間限定上映の『ボーはおそれている IMAX版』が目に留まり、えっ…!?という葛藤の後、チケットを買ってしまっていました。
いやわかってる。絶対鬼滅観た方がいいよね。近畿地方もちゃんと怖いらしいしさ。白石監督作品好きだし。8番出口もかなりちゃんとした出来らしいじゃん。MERもめちゃくちゃ評判いいから気になるしさ。ヒックとドラゴンのCGアニメの方昔見て内容は覚えてないけどめちゃめちゃ面白かったのは覚えてるから実写も興味あるよね。
全部、全部さ、きっと見たら面白いのよ。保障されてるのよ。
それに対して「ボーはおそれている」はさ、感想検索すると見事に評価が「最低」か「自分は好き」しかないわけ。割合的には6:4か7:3ぐらいかも。
なんかもう最近ね、観る前から絶対に面白いって信頼のある作品よりも、つまんねーかもな…っていう博打要素のある作品の方がスッと観れるんだね。
ギャンブルにハマるのと似てるのかもしれないね。スロットとかもさ、ハズレがあるからこそ当たりへの期待値もつり上がって、いざ当たった時にドーパミンがより多く出て、ハマっちゃうらしいじゃん?
ショート動画延々見ちゃうのとかもその仕組みなんだって。
もうね…きっとそうなんだね…。魂がさ…ひねくれちゃってんだね…。
というわけで観たんですがめちゃめちゃ面白かったです。「好き」側の人間でした。サンキューアリアスター!
いやでも別におかわりは全然したくないですけどね。それはミッドサマーもヘレディタリーもそうだったから。「もうたくさんだよ」がアリアスター作品の良さだからね。
既に配信もやってる作品をあえてIMAX料金を払って…!?という葛藤があったんですが、いや見る価値大ありでしたね。配信って飛ばせたり止めれたりしちゃうから、こういう観るのが苦痛なシーンのありそうな作品ほど劇場で拘束されて観る価値があるんですよね。
そしてIMAXスクリーンの価値もありましたわ。まあ画面おっきくてキレイで悪いことなんて無いんで基本どんな作品もIMAXで観た方がいいに決まってるんですが、この映画で「没入感が増すこと」ってかなりのバフだったと思う。
あと前もって「映画ジャンル:コメディ」ってハッキリ言っといてくれて助かりました。笑っていいと思って観るともう爆笑シーンの連続で、ずーっとニコニコしながら観てた。すさまじいギャグの量じゃなかったですか? 3時間よくこんなあらゆるオモシロシーンを連発出来るなと思って感心しました。
というわけでどこが面白かったか書きたいので以下ネタバレ感想でお願いします。
でもさ、「巨大なチンコが出てくる」ってネタバレだけされた状態で観たんですけど、それは知らずに見たかったな!「いつ出てくるんだろう」ってソワソワ頭の端にある状態で観ちゃったからさあ!
というわけで映画の内容ですが、まずオープニングの出生シーンの時点で「これは名作の予感」と思いました。
昔全身麻酔で口腔から嚢胞を切除する手術を受けたことがあるんですが、手術が終わって目覚めた時本当に苦しくて、目に乾燥防止なのかワセリンのようなものが塗ってありよく見えないし、口の中の手術で血がかなり喉に流れたのか溺れているように呼吸がままならず、苦しみ喘ぎながら「生まれる時ってこんな感じなのかな」と思ったんですけど、その時の感覚を思い出しました。
もう観てるだけで息苦しくってねえ!IMAX最高~!とこの時点で思いましたねえ!
アリアスター監督って想像ですけど別にきっとリアルな親子関係が壊滅的とかそういうことは無いんじゃないかなって思うんですよね。普通だと思う。
でもそれはそれとして「人間って普通にキモくね!?😁」って感覚があるんだと思う。結局やってること繁殖とか選別なのに変な理屈つけて家っていう枠に拘ったり宗教とか制度とか作って意思っていう機能を無駄遣いしてなんか延々とキモいことやっててウケる~!みたいな。
自身のリアル親がどうとかってよりは、一人の人間が親っていう他人から生まれて、一人の人間が子っていう他人を生む、その流れに人間がゆえに絶対に介在する理不尽とか歪みとか欺瞞、システムとして〝そう〟である避け得ないキモさってものを痛烈に感じてて描きたくてしょうがないんじゃないかなと思う。
もちろんそういう捉え方だけが人間を説明するすべてじゃないって分かってるけど、皆そういう側面がまるで根本的に無いものみたいに扱うよね!でも僕って結構〝こう〟なんだけど、皆もわりと〝こう〟だよね?みたいな。
そして普通は居心地が悪くなるようなそういう側面を「面白いもの」として劇画化して描いてしまうところが監督の作家性なんじゃないかなって。みんな僕も含めて滑稽でオモロいね。だいちゅきだよ。っていう。
海外のミームで水棲生物から陸地に初めに上がった個体を描いてる絵に矢印引っ張って「コイツのせいで今の俺の苦しみがある」って注釈つけてるネタ画像があるんですけど、初っ端からそれを思い出しました。
生まれるって基本的に苦しみの始まりなんですよね。そして始まってしまった以上はもう苦しんでることを笑うしかないのです。
アリアスター監督がインタビューで「日本の方がこの映画を受け入れてくれる人は多いんじゃないかと思う」って言ってたのもわかる気がします。仏教ってそういうノリだし。
というわけでまだ何も分からないけど辟易できる出生シーンの後には沈黙の多い打ち解けないカウンセリングが始まり、終わり、ああボーちゃんは病気なんだねと理解し、そして帰宅シーンと続くわけですが、もう家の周り治安悪すぎてクソワロタですよね。
ホアキンフェニックスが尋常じゃない勢いで全力疾走始めたから何何何何!?と思ったらどう見てもバケモンな全身タトゥーで黒目しかないキ〇ガイが同じぐらいの勢いの全力疾走で何も説明もなく無言でホアキンフェニックスを追いかけてくるから「怖wwwすぎるwwwww」って内心大爆笑でした。
オートロックに一切スピード緩めずバァン!!入ってなおギリギリのとこまで迫ってましたからね。そもそもなんで追いかけてくんだよ!(なんで?が通じる相手に見えますか?)
もうその後ずーっと面白くてずーっとヘラヘラ笑顔で見てました。嫌じゃないシーンが無いですからね。
普通に通りに死体がある←嫌すぎる
普通に咬まれたら死ぬ蜘蛛がアパートに出てる張り紙が貼ってある←嫌すぎる
エレベーターが壊れかけている←嫌すぎる
扉の下の隙間がちょっと空いている←嫌すぎる
深夜になっても通りの音が丸聞こえでうるさすぎる←嫌すぎるが前住んでいたアパートが似た状態だったので懐かしかった
ドアの隙間から何も音を出していないのに「音量を下げろ」と書いた紙が何度も滑り込まされる←嫌すぎる
もう絶え間なく!絶え間なくわんこそばのように嫌です!そこに「薬は絶対に水と一緒に飲まなきゃいけない」「飛行機の時間に遅れちゃいけない」「忘れ物しちゃいけない」とかボーの強迫神経症的な気質も合わさり地獄!地獄です!面白過ぎる。
あー!お水出ない!お水出ないねえ!そうだねえ!お薬はお水といっしょにって言われたもんねえ!どうしよっか?どうしよっか?ああ向かいね!あるねえ!お水ねえ!ああそっかオートロックねえ!こりゃ厄介だねえ!あっそうだね!そうしようね!うわやべー奴がこっち見てるねえwwwさっお水飲めたね!よかったねえ!あっカード使えないね?困ったねえ!あっ現金持ってる?えらいねえ!ゆっくりでいいからねえ!足りる?足りるかな?あれっ表が騒がしいねえ!えっマジで?ウソマジで?やばいねえwwww入ってっちゃうねえwwwどんどん入ってっちゃ…いやでも別の部屋とか…あっ点いたねえwwwwあれキミの部屋?キミの部屋みたいだねえwwwwwwこりゃまいったねえwwwwオワタねえwwwwwww
そんな感じです。その後も「そんなところでwww家主なのにwwww」とか「死wwwんwwwでwwwるwwww」「蜘蛛のやつでwwwww」「伏線回収wwwww」とかオモロシーンの連続で、極めつけが風呂場のアイツですよ。爆笑できないのがつらかった。自由に笑っていい環境で酒飲みながらアパート周辺篇見たらめちゃくちゃ面白かったんじゃないかな?ヒャーwwwwwwって引き笑いし続けてしまうかもしれない。
ボーが統合失調症的だとか、信頼できない語り手だとかいうのもそれはそうなんですが、どこからが現実かなんてこの映画の場合は特に重要なポイントじゃないように思います。本人の主観がそうってこと以外に重要なことなんて本人にとってはないんですから。
でもある種優しい世界だなって思うのは、ボーが一人でおかしいんじゃなくて出てくる周りの人間も全員キ〇ガイなところですね。ひとりじゃないって素敵なことです。
子供のころ呪怨劇場版の予告で、寝ようと思ってベッド入ったら布団の中に霊がいたというシーンで震えあがったものでした。おばけが怖くなった時は布団の中が唯一の安全地帯だったのに、それすら奪われてしまったと。
しかし今考えてみれば幽霊はしょせん幽霊、現実には存在せず家の中に突然現れることもなければ目に見える形で追っかけてきたりすることもないわけです。でもキ〇ガイなら実在するし全部やるんですよね。そういうホラーという名のドキュメントをつきつけられます。
後ろの列に若い男二人がいて、予告編の間ずっとしゃべってたけど本編始まったら静かだったんで安心したんですが、唯一トラック後の暗転でぼそりと「見んのつらいんだけど…」って呟きが聞こえてきてよかったです。
もうアパート編で既におなかいっぱいですが、その後の居候編も緩むことなくまた別の嫌さ。
こっちは「居たたまれねえ~!」っていう嫌さでしたね。バリエーションつけてくるじゃん。
娘のキャラがよかったです。ボーの若い娘をなるべく刺激しないように無害であろうと大人しくしてるオドオドした態度とずーっとイライラしてる娘のフラストレーションが良い相乗効果になって緊張が高まったあとにペンキ…エェーッ!?っていう。
あと回想シーンでめっちゃサクサク刺されまくってるのも面白かった。「なんでこんなことを?」が本当にそうすぎて笑うしかなかった。
この「笑うしかない」ってとこがミソで、やっぱ笑いってものを突き詰めていくと「笑っちゃいけないことで笑う」のが一番面白いですからね。
笑わせようとしてることで笑うのっていないいないばあの延長なんですよ。ほ~ら「ばあ」でこう来るから笑えばいいんですよ~って一回目で学習して二回目できた~ってキャッキャと笑う予定調和の笑いなんですよ。赤子はそれでいいかもしれませんが卑しくも多くのコンテクストを得てきた我々がずっとそんな低俗な笑いを求め続けることは停滞ではないですか?野々村議員の号泣記者会見より面白いM-1のネタなんてこの世に存在しますか?送り手がサービスで提供する介護の笑いではなく受け手が主体的に見出す発見の笑いへとシフトしていくべきです(過激思想)
そのへんの「これがシリアスな人も世の中にはいるって分かってるけどそのこと自体がオモロいね」という発見の笑いを追求するアリアスターの攻めた姿勢は私は好きですね。本国で全然ウケなかったらしいっていうのも含めてオモロいです。
森編は〝溜め〟の笑いでしたね。壮大なオデュッセイが描かれ、映像の美しさも相まって見応えがありガチでエモい気分になりつつも牧歌的な世界観にちょいちょい挟まる「カウンセリングを受け」とかの現実生活に引きずられた設定にちょっとオモロくなりつつ、おおやったやん…とよくわからないまま始まったよくわからない話のハッピーエンドにめでたい気持ちになってたところを実はウチの家系は…アレがアレすると…え…?じゃあ僕たちはどうやって生まれ…?………。………。
どっ。
何やねん!(キレ)こんだけ壮大な話を長々と物語り、メタ的に言ってもかなり凝った映像に仕上げ語った生命賛歌、イエ賛歌、職業賛歌のオチが最大の矛盾が出て強制終了という。面白過ぎる…(感動)(麻痺)
あの暴走PTSDアーミーマンも出てくるだけでオモロくてずるいですね。もう中庭で電話してる後ろでなんかゴロゴロしてた時から撮り方がギャグキャラの画角だもん。
ていうかこの映画人が死ぬ場面が全部面白いという深刻な業の深さがあります。なんか勢いがあんだよね!
そしてあんなに苦労したけどヒッチハイクであっさり目的地に着くという。クソワロ。えっ町名これよね?えっ着いたの?あっここ家?えっゴール?親切すぎん?お礼とかしなくて大丈夫?あっ普通に帰るんだ?おじさんありがとう…という感じ。
そっからは怒涛の展開でありました。ミッドサマーからセックスシーンは連続ですが、あっちはばあさんたちに衆人監視される中がんばえ!がんばえ!されながら腰を振るという最悪な行為状況だったのに対して、こっちはいい感じの音楽を聴きながら「死んじゃう!死んじゃうよお!」とガチの恐怖を感じつつ快感にあえぐホアキンフェニックスといううっかり萌えてしまいそうな、行為自体はなんか普通に幸せそうに母の呪いからの卒業&筆おろしを達成してて「よかったじゃん…」と思ってたらヒィーッwwwww死wwwwwwってなった後に更にヒィーッ!!!!!?wwwwwwってなってすごかったです。
ミッドサマーよりこっちのセックスの方が顛末含めると嫌さとして上回ってる気がしますがどうなんでしょうか。やっぱりこの映画は男性の方がより深く入り込めるのかなあとも思ったんですよね。男根と母親、その相克というテーマ性はやっぱり女としては当事者性を欠くところがあるので、深刻度は想像の範疇を出ないし。
いや、息子を持つ母親なら分かるのかな?当事者性あるから。最後の審判でこのセッを「あなたに与えるべき愛をよその女に与えた最大の裏切り行為」みたいに言ってて、えっそこ同列なんすか?源泉は一緒なんすか?違くないすか?と引きましたが、考えてみると息子を彼氏扱いする母親なんて話もXで見かけなくはないですからね。わたくしにはその辺の機微がどこまで〝あり得る〟のか、どこまでガチかなのか想像できませんわ。
もう色々(でっかいチンコとか)あって、一人船に揺られるボーのでっかくて丸い背中が哀れで抱きしめたくなりましたね。どうもしてやれないから。
最後の審判は世界全てに責められるようで、Bohemian Rhapsodyが流れるかと思いましたわ。
見てる間は入り込みすぎててピンと来てませんでしたが、あれは我々も断罪されるボーを見ている観客の一人ということなんですね。どことなくEND OF EVANGELIONの様相を呈してきました。EOEが好きな人はボーも好きなんじゃないかな?(暴論)
最後すべて諦めたようなボー(ホアキンフェニックス)の表情がとても印象的でした。画面の中のみんな帰っちゃった後も私はしばらく(エンドロールが終わるまで)見てたぞ。ここまで本当によく頑張ったな。(一時期よく見かけたミームのやつ)
終わってみるとボーは何だかんだずっと正気で、それがボーの不幸だったような気もして物悲しい気持ちになります。
めちゃめちゃ笑えたのは他人事として突き放して笑ってたんじゃなくて、普通に自分もそれを体験する立場として笑ってたし(自分の不幸ってそれはそれで面白いから)、この映画は母親に手が出たあの一瞬以外一貫してボーの一人称視点から一切ブレずに物語を構成していたので、ボーを身近に感じながらボーと共に苦しみ歩んできたこの旅路がなすすべない絶望で終わることを切なく思います。でもそういうことってあるからな。(雑な締め)
この映画を新宿TOHOのレイトショーで観たんですよ。今までレイトショーを選択肢に入れるとしても新宿TOHOに関しては悪名高いトー横や歌舞伎町の奥にあるんで、なるべく避けた方がいいんじゃないかと思っていたんですがまあいいかと思って。
日付が変わった頃出ましたが、道は明るいし人はいっぱいいるのでまあそう危ないこともなさそうでした。元々の層である若い女やキャッチだけじゃなく、観光で歩いている外人が今は同じぐらいの数いるので逆に外部の目があって変なことは起こらなそう。
唯一、三人ぐらいの男連れの一人がフラフラ歩いてて片手に酒の缶持ってて、ちょうど私と近い距離ですれ違う直前の所で「吐きそう…」みたいな会話を横の男と始めたのでギョッとしながら「私に吐きかけたら殺すぞ!!」と思った一幕がありましたが…(危ないのはお前)
通り抜ける歌舞伎町の喧騒でボーの住んでたアパート周辺の治安の悪さを思い出して、さすがにアレに比べたら現実は平和で、死体が転がってることも、全身タトゥーの男がこっちに向かって全力疾走してくることも、ずっと「助けて助けて助けて」言ってくるオッサンがこっちについてくることもなく、とても爽やかな気持ちで家路につくことができました。いい鑑賞体験でした。

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