ホールドオーバーズ観た

お久しぶりです。なんか別に仕事が特別忙しくなったというわけでもない気がするのに妙に気忙しく、一切日記を書く気にならずに12月が過ぎていきました。これが師走ってことか…

気付けばもうクリスマスです。メリークリスマス。そしてこのクリスマスに相応しい映画を見ました。『ホールドオーバーズ』なんとアマプラで観れます!まさにこの時期、年末も含む時系列の映画なので今観る映画に超オススメ!

それにしてもめちゃくちゃいい映画だったんですが、あんまり感想が出て来ないですね。というのもロボットドリームズは「でもさあ…!」とか「あのさあ…!」とか、もっとやりようはあったんじゃないかみたいな、でもわかるけど…みたいな引っ掛かりの部分が沢山あったので言いたいことも沢山あったわけなんですけど、ホールドオーバーズに関しては「そうだよね…」の集積で出来上がってるのでもう言うことがないんですよ。ひたすら胸がいっぱいになるだけ。

でもせっかくなんで以下ネタバレ感想注意。

まあ映画自体に派手なプロットとか無いのでネタバレと呼べるような話になりようがないっちゃないんですが。
まずこの映画、一切大きな悲劇とか起こりませんでした。人が死んだりもしない。開始時点で亡くなっているという事実と、遺された人はいるけど。
あとこう、「全部うまくいくかも…」みたいな絶頂から不意の不幸でどん底に突き落とされるみたいな、そういう感情を激しく揺さぶるような展開の仕方もしない。全部それぞれの過去、人生の地続きで起こることだけが起こる。
そういう堅実さをむしろ高く評価したいと思いました。「犬が死ぬシーンはありますか」的な安心事項として、むしろこの地味さをセールスポイントにしたい。そういう目を覆いたくなるような感情のジェットコースターがある=良い映画というわけじゃないんだと、そういう強い味付けじゃなくても完成度の高い映画は作れるんだというのを改めて実感させてもらったというか…。

しいて言えば前半部分、メインの登場人物に目立った良い所が無くて欠点ばかりが目立つために見るのがキツイと感じる人がいるかもしれない。ストレートにうだつが上がらない面子ですからね。
でも個人的には一切見るの嫌だなと思う時間が無かったな。メイン二人に常に「こっちだって出来ることならもうちょいうまくやりたい」っていう譲歩とか我慢のような、抑制の態度がちゃんと見られたからかもしれない。個人的な苛立ちを八つ当たりのようにぶつけるとかはあんまり無くて、真っ当な諍いしか起こらないんですよね。
先生は自省録が愛読書だけあって理性的だし、生徒も成績いい方なだけあって同様だし。ちゃんと「アンタの言い分も分かるがこっちの言い分も分かるだろ!?」っていうとこから入る。そこからお互いの妥協点を少しずつ探っていく。対話だ…。

また、元々ある欠点が克服されていくとかじゃなくて、欠点は普通に欠点のままなんですよね。そこがいいんですよ。しょうがないことだもの。大事なのは、当然のように欠点だけが人間のすべてじゃないということであって。そして、欠点があろうと根がいい人かどうかということなんですよね…結局は…。いざという場面で正しい態度を見せられるかどうかなんですよ…。

ハナム先生は歴史大好きで口を開けば遥か昔のギリシャとかの話ばっかりするけど、別にだからといって現代を蔑んでいるとかじゃなくて。いやそういう現実逃避的な厭世の一面もあるっちゃあるんですけど。
ただ本質的には博物館で語ったように、どんなに時代が離れても営むのが人間である限り昔も今も変わらないという部分に救いや興味を見出していて。
自省録のいいところを「聖書コーランギーターが一つになったような書物で神に言及してなくて最高だ」と言っているように、人生の不条理や世界のままならなさに自分の考えで納得したいと思っている。

そんなハナム先生が自分の心で「それは違う」と思っている古代ギリシャの考え方が、「人は過去に導かれ運命を生きる」という言葉で。「そんなのはたわ言だ」と先生は切り捨てる。
「君は父親じゃない。誰も自分の父親じゃない。私も私の父親じゃない、父親が同じと思わせたかったとしても」と言うハナム先生も、おそらく父親とは色々あったんでしょう。幼いころ母親が亡くなって、父親とは十五の時バートンの奨学金を得て家を出て以来疎遠。
「それから大学へ。過去は振り返らなかった」「バートンが私の故郷だな」「少しでも貢献したかった。彼らが社会に出る準備をさせたくて」という吐露は、単なる麗句という側面もあったかもしれませんが、ハナムにとって父親や社会のしがらみから自由にしてくれた大事な場所だったことも確かなんでしょう。歴史を教えながら、過去じゃなく未来のために奉仕しているというというささやかな矜持がハナムにはあった。
そして「君の過去が人生の方向を決めたりはしない」という言葉を教え子に証明するために、矜持のために自分の行動を選び取った。

かっこいい…。
そう、しみじみ残るこの〝良さ〟は、カッコよさですよ!
「よい大人」を見たな、というこの…。

でね、これは本当にバレの感想ですが、最後のあの場面で「ハグをしなかった」ってところがめちゃめちゃ逆に心に残ってます今。
してもおかしくない場面じゃないですか? アメリカの映画ノリ的には。でもそういうことじゃないんだなって。たとえ今生の別れだったとしても、ありがとう一生忘れません恩人よっていうプレシャスな、そういう感じではないんですよ。あくまでそれぞれの人生を生きていった先の偶然だから。過去に導かれ運命を生きるわけじゃないけど、運命を決める自分を形作って「そういう人」にしているのは、その人本人だけの過去なんですよね。「頑張れよ」「またな」っていう、それに尽きるんですよ。そして未知の未来がそれぞれに続いていく。クゥ~!

なんていい映画なんだ。最後のさあ、ミドルネームのくだりもいいんですよねえ…。いや最後の話しすぎだな。やりたい放題か?
とにかくこう、「幸あれ」という気持ちに尽きる…そういう清々しい映画でした。いいヒューマンドラマを見たな…。

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