小樽で拵えた真新しい銃創。
塞がってはいるがその部分だけ僅かに赤く、薄い膜のような皮膚が張って僅かに引き攣れている。
目についたのか、尾形がその部分を指で確かめるようになぞった。
じゃれるような手を、止めるでもなく牛山は見下ろす。
「アンタほど強くても、やっぱり銃で撃たれりゃ穴が開くんだな」
独り言のような呟きに、牛山は呆れて返した。
「当たり前だろ。筋肉で鉛玉は防げん」
「ふうん……」
鼻を鳴らした尾形は、何が嬉しいのか、目を細めて牛山の目を見つめた。弧を描いた口が、機嫌良さそうに言う。
「理不尽だな」
その理不尽を一方的に強いる力を持った指が、慰撫するようにもう一度、薄い銃創を滑った。
戯言とはいえ、何やら憐れまれている。高みから見下ろすような目線で。
その嫌味な意図を理解した牛山は、フンと憎々し気に鼻から息を漏らすと、服も着ず布団を被ったままだった尾形の生白い尻をむんずと掴んだ。今日はこのまま寝かせるつもりでいた温い身体を、ひょいと組み敷いて見下ろす。
「なにをする」
「理不尽だから、お前の穴をもうちょっと使って帳尻を合わそう」
「わけがわからん」
心底馬鹿にした、気の抜けた声を上げながら、尾形は特に抵抗もしなかった。それどころか、珍しく背を抱くような素振りで腕が背に回る。
一瞬オッと思ったが、その手の目当てがやはり件の傷跡らしいと気付いて、牛山は本格的に呆れた。まだしばらくは引っ付いていると決まった身体の、せっかくだから気に入りの部分をもう少し触っていることにしたらしい。気に入った玩具に飽かず執着する仔や猫を思わせる無心さで。
征服され、もがくような肉体の反応を返す様は、か弱い生き物の憐れな可愛さがある。すべてを支配されて、ただ熱を上げて包むばかりの健気な身体の、しかしその指だけが、たまに爪を立てながらぐりぐりと皮膚の一点を何度も何度もくじるようにした。
その白い指が、まるで自分の孔をそこに開け、貫通させ、入り込みたいと執拗に訴えているような気がして。その不毛な仕草に、妙にぞくぞくと煽られる肚を自覚して、牛山はどこか憂鬱になる。
よくないものに耽っているという感覚が、耽溺すればするほどに湧く。尾形を抱くといつも。
牛山のことを嫌っていないと、分かるからかもしれない。不思議なほど牛山を拒んでいない。好いてもいないが、容れてはいる。
そうして何の悪感情もなく抱かれるように、何の悪感情もなく、尾形は牛山を殺せるのだと。
身を許す時のような目で引き金を引く尾形の顔が、牛山にはありありと想像できた。
だがその想像が、どういうわけか、悪くないのだ。その時にはもう、すべてをその指に支配されてしまうと知りながら。
悪い気分がしない。
牛山自身にも理解できない感覚である以上は、治しようもない。
だからせめて、抱いていられる間はその身を許させたい。結局はそういう結論になる。そしてまたずるずると嵌まり込むのだ。
悪いものでも構わず食わせて貰おうと。どうせその時が来れば、許さざるを得ない身なのだから。
